2001年度例会
第3回例会・総会
第2回例会
第1回例会


   ■2001年度第3回例会・總會

  日時:2002316日(土)

 受付開始12:30 報告13:0017:00 総会17:0018:00
 懇親会18:00
 会場:学習院大学西5号館202教室(JR目白駅下車1分西門入る)

  テーマ「出土資料と法制史をめぐって」
  

       総合司会:工藤元男(早稲田大学教授)

 

1 楚国の文書行政と包山楚簡「文書類」の文書的性格について

 報告者:広瀬薫雄(東京大学大学院博士課程)

 包山楚簡「文書類」は楚の統治について記した文書として注目を浴びてきた資料である が、墓葬から出土した副葬品であることから、それが当時実際の統治の中で用いられた 文書なのかどうかという資料的性格が問題となる。本報告では、包山楚簡の形式的な特 徴に着目することによって、包山楚簡のテキストそのものがどのようにして作成された のかについて検討し、それをもとに楚国の文書行政について若干の検討を加えてみたい。

2 漢代の裁判手続き『劾』について―― 一九七三・七四年出土居延漢簡「劾状」の分析から――

 報告者:鷹取祐司(梅花女子大学非常勤講師)

 「劾状」は、傷害・官有物品略奪・違法越境逃亡などの凶悪事件を起こした官吏を弾 劾したものと概ね理解されている。ところが、「劾状」の中には、被「劾」者が吏では なく民間人であったり、凶悪事件ではなく「軟弱不任吏職」による懲戒免職処分を以て 「劾」されている上に、被「劾」者が「劾」以前に既に免職されているといった、弾劾 の事例としては理解できない事例が含まれている。報告では、これらの事例の分析から 「劾」とは何かを再検討したい。

3 爰書の再検討

 報告者:籾山明(埼玉大学教授)

 本報告の目的は次の3点である。第1に、敦煌・居延漢簡の中から爰書に該当する木簡を選び出し、集成すること。第2に、集成した爰書の分析を通して、秦漢時代の訴訟 手続きを具体的に解明すること。そして第3に、辺境出土木簡と雲夢睡虎地秦簡との橋 渡しを試みることである。このうち第1の点は、報告者自身の旧稿に対する自己批判を 含む。報告を通して、爰書という文書の実体的認識とともに、出土文字資料を扱う際の 方法論についても私見を述べてみたい。


■2001年度 第2回例会
日時:2001年12月1日(土)  
会場:古河ソフトウェアセンター (茨城県古河市中央町2-3-50 電話:0280-22-1223
見学会場:篆刻美術館      (茨城県古河市中央町2-4-18 電話:0280-22-5611


プログラム

1 日本国内収蔵の古陶文字

報告者:松村 一徳氏(篆刻美術館)
 古陶文字は古文字研究分野において研究が最も遅れているが、日本国内にも陶文自体は早くから収蔵されていた。それらの出土地点は不明で、加えて研究に進展のない現状である。考古学的発掘を経ない出土資料の扱いに於いて、文字釈読を目的とした拓本重視の研究方法では限界がある。対処法を示し、古文字学による出土資料学へのアプローチを提案する。東京国立博物館収蔵の陶文片を中心に、日本国内機関収蔵の古陶文字を対象とする。

2 明清書論の篆書・隷書と出土遺物

報告者:平勢雨邨氏(書道一元会)
 篆書と隷書の違いをいう場合、目のつけどころが明代や清代のいわゆる伝統書論に基づくことは意外に知られていない。より気をつけるべきなのは、伝統書論に沿って篆書・隷書を厳密に理解した場合、実際に出土してくる戦国時代の文字史料は、理解しがたい例ばかりになるという現実である。明代は元朝の治世を経て、復古の議論が盛んであったが、多くの創作がなされたことで知られている。本発表では、伝統書論にいう篆書・隷書の議論と、出土遺物をめぐる書家の判断基準を略述したい。

篆刻美術館見学:

研究発表終了後、篆刻美術館内を見学
見学内容  A:現代篆刻家作品、B:陶文(10点前後)、C:瓦当(1−2点)、D:秦封泥、E:その他


■2001年度 第1回例会 

日時:2001714日(土)

会場:立正大学大崎キャンパス 3号館324教室

東京都品川区大崎4-2-16

プログラム

1 養生思想と早期医学 ―内因論と「虚」概念の系譜―

報告者:白杉悦雄氏(東北芸術工科大学)、司会:林克氏(大東文化大学)

 馬王堆および張家山から出土した養生書を資料として、早期医学理論にたいする養生説の影響を、内因論と「虚」概念について考察してゆく。内因論や「虚」概念は、養生という目的を追求する過程で注目され、理論として析出されたものであって、早期医学の臨床や理論のなかには存在していなかったのではないか。内因論や「虚」概念を組み込んだ『黄帝内経』の発病理論は、養生説から移植されてものではないか。これらの点について考察する。

2 郭店楚簡『六徳』の思想

報告者:湯浅邦弘氏(大阪大学)、司会:谷中信一氏(日本女子大学)

 郭店楚簡『六徳』には、「仁」を子の徳とするなどの特殊な定義、『論語』『孝経』『礼記』などとの類似点が窺えることなどから、儒家思想形成史を考究する上で極めて重要な資料と考えられている。本発表では、さらに、『六徳』に記される「君子」や六書(詩・書・礼・楽・易・春秋)の存在、郭店楚簡の内の他の儒家系文献との関係などにも留意しつつ、その全体構造と思想史的意義について検討を加えることとしたい。

3 楚簡与楚史研究

報告者:陳偉氏(武漢大学)、司会:工藤元男氏(早稲田大学)

通 訳:本間寛之氏(早稲田大学)

 戦国楚的出土,集中在20世紀下半叶。目前已知的楚,大約有30多批,総字数約在10万字左右,内容渉及司法和行政文書、卜筮和喪葬方面的記録、各種思想文化典籍。対楚簡的研究,使得中国出土文献這門学問中,開辟出一个生机勃勃、前景寛闊的新領域。作為珍貴的原始資料,楚簡的発現大大推動了楚史的研究。一些伝統課題(如政区制度)的探討,由此取得更加深入、細致的認識;司法、名籍制度等方面的全新研究,也因而得以展開。